プロじゃなくてもエア?
プロじゃなくてもエアはできる
こんにちは、田淵ロルです。
現代サーフィンの花形「エアリアル」
エアリアルといえば”憧れの技”
というイメージを持っている方が多いと思います。
では、エアリアルの難易度って
一体どの程度なのでしょう?
実は、私は個人的に
そんなに「難しくない」と思っています。
同じく憧れの技である「チューブライディング」
のほうがずっと難易度が高く、
波のブレイクを予測する洞察力や予知力、
カレントに対抗出来るパドル力、
ポジションをキープし続ける持久力、
チューブになる波をゲットできる人間力、
恐怖を克服する精神力、
行くと決めたら必ず行く決断力・・・
挙げればキリがありません。
優雅な見た目とは裏腹に、
本物のサーファーでしか、
なし得ないことだらけ。
難易度MAXで、
サーファーとしての総合力を問われるのが
「チューブライディング」だと思います。
それと比較すると、
「エアリアル」はある意味「小手先の技」です。
もちろん、世界チャンプのエアから
一般人のエアまでは大きな隔たりがありますが
「エア」は「エア」です。
ですので、
「エアはプロにしかできないのか?」
と問われれば、
「そうでもない」とお答えします。
中級レベルの方であれば、
十分に目指せる技だと思ってます。
ただし、
超上級者なのにできない人がいるのも事実です。
そう考えると、
エアは少し特殊な技なのかもしれません。
エアリアルのコツ
前足の引付け
早速ですが、
「エアに一番必要なコツは?」
と問われたら
「前足の引付け」と答えます。
チョットだけではダメです。
膝と胸が本当にぶつかるくらいに引き付けます。
これが出来ると出来ないとでは、
飛び出しの難易度も
着地の難易度も全然違ってきます。
膝と胸が離れているエアは難易度が高く、
私には成功できる気がしません。
逆に言えば、前足の引付けさえ出来れば
エアの難易度は格段に下がります。
ですから、
是非ともマスターして欲しい動きです。
ところで、
ライディング中に前足が滑ってズレて、
ボードが自分に飛んできたことはありませんか?
私はエアをしようとして失敗し、
ボードが顔に当たって気を失いかけたことがあります。
気を失って水を飲んだら大変なので、
なんとか気を保って岸に戻りましたが、
結構な恐怖体験でした。
上記の出来事で何が言いたいのか?
というと、そのくらいの圧力が
”ボードの前足部分にかかる’’ということです。
前足に板からの圧力がかかってないと、
膝を胸にぶつけるくらいまでに
前足を動かしたときに、
足だけ引き付ける形になってしまい、
板が足の裏に付いてきません。
では、
どうやってその圧を作るのか?
というと「板を沈める」ことで作り出します。
板は軽いし、さらに揚力がついているので、
少し沈めるだけでも
かなりの反発力を生み出してくれます。
そうして板全体に圧力を作った後、
後足を残したまま前足を引き付けるので、
前足側に圧力が集中します。
前足をシッカリ伸ばせるか?
波から飛び出すためには、
板と身体が飛ぶだけの力を作り出し、
それを制御する必要があります。
つまり、圧のコントロールですが、
「後足の伸び縮みはできても、
前足は固まったまま・・・」
という技術レベルだと、
圧のコントロールが難しくなります。
「前足をピーンと伸ばせるかどうか?」
がエアの試金石になります。
カットバックのときに前足をシッカリ伸ばせているかどうか?
確認してみてください。
出来ていなければ、練習してみてください。
ステップバックは不可欠
カットバックのときに
前足をピーンと伸ばせる方であれば
ステップバックは出来ていると思いますが、
エアリアルにはステップバックが不可欠です。
デッキパッドのキック部分を
足の裏で掴む意識でステップバックし、
キック部分に足裏が乗るくらいにまで
後足を下げられれば、
飛び出しの難易度がグッと下がります。
そうなると
必然的にかなり広いスタンスになります。
エアリアルを目指すのであれば、
広いスタンスのサーフィンを身に着けましょう。
ちなみに私は板選びの際、
ステップバックのしやすい板を選びます。
どんなに動きが良くても、
ステップバックしにくい板は使いません。
短めの板やテール幅の広い板がオススメです。
ステップバックが出来ないと、
エアリアルの習得は極端に難しくなります。
「ステップバックのために板を買い替えても良い」
というレベルで、
ステップバックは絶対必要です!
実は、ステップフロントが出来ると、
さらに良いらしいのですが、
残念ながら私は意識的にステップフロントが
出来るレベルには到達しませんでした。
ステップフロントができると
成功率が上がるのだそうです。
さて、
サーフボードの沈め方は色々あると思いますが、
基本的にはボトムターンで沈めます。
エアにはエアのボトムターン
エアを仕掛けようと思ったときには、
リップの時とは違うボトムターンをします。
リップのボトムターンと比較すると、
前に進むのをグッと我慢してその場に留まり、
圧を溜めます。
前に進んでしまうと板が沈まず、圧が溜まりません。
それに、その場に留まるということは、
よりクリティカルポジションに近づくことになり、
より飛び出しやすくなります。
「そんなことをしたら失速してしまう」
と思った方もいらっしゃると思いますが、
実はここが大きなポイントです。
シティーウェーブの映像をご覧になってください。
プロサーファーがシティーウェーブでボトムターンをするとき、
海で行うようなボトムターンをすると
壁に激突してしまうので、
前に進む量を調節しているのが分かると思います。
すると、
それまでは横への動きによって逃がしていた
板の裏にぶつかる水流を
強く受け続ける形になります。
つまりエネルギーが沢山溜まります。
その溜まったエネルギーを上手く開放すると、
「ビュン!」
と、瞬間移動するように加速します。
そうです、アレです。あの状態です。
あの状態を作ることが大切になってきます。
簡単ではありませんが、出来ないこともありません。
別段、プロのように完ぺきである必要はありません。
要素を取り入れるだけでサーフィンは激変します。
これは是非ともマスターして欲しい要素です。
「サーフィンはスケボーとは似て異なる。
波の特性を生かしたスポーツだ」
という、
根本概念を理解するための格好の材料が
ボトムターンです。
私のブログの最大のテーマです。
せっかく上手いサーファーでも、
スケボーのターンに寄り過ぎているせいで
実力を出し切れない方をよく見かけます。
波の上でスケボーをしようとしているのですが
ランページとは違って、
波は沖から岸に向かって移動しています。
波は止まっているように見えても、
足元の水は動いているのです。
これをどれだけ効率良く使えるか?
どれくらいのレベルで理解できているか?
が、サーフィンを大きく左右します。
サーフィンはスケボーではありません。
サーフィンはサーフィンなのです。
少し話がそれてしまいました。
という訳で、
エアのボトムターンについて触れました。
ちなみに、上記は「深々とボトムのフラットに降りましょう」
という提案ではありません。
ライン取りとしては、
オフザリップの時よりも上のライン、
つまり、浅いボトムターンのほうが難易度が低いと思います。
エアに必要なボード操作
オフザリップといえば、
かつては
「リップから飛び出したノーズを扇状に振りかざす技」
というイメージでしたが、
ケリー・スレーターの登場で
テールを蹴り上げる動きに変わりました。
つまり、
回転の支点の位置が
テールからセンターに変わったのです。
この変化は
『低速の技術から高速の技術に変わった』
瞬間で、
サーフィン史上に残る
歴史的な転換点になりました。
この技術によってターン時の減速要素が減り、
より高速なサーフィンが可能になりました。
その後のサーフィン技術の変化は目覚ましく、
エアリアルを筆頭に
様々な技術が開発されることになりました。
センター支点運動というのは、
丁度コサックダンスのような動きで
前足を軸にして後足を蹴り出す感じです。
現在では、
あらゆる動きに取り入れられている運動要素ですが、
低速の運動としてのテール支点運動が
無くなったわけではありません。
使い分けされるようになったということです。
エアのタイミング
「オフザリップのタイミングが遅れてしまい、
波から飛び出したのがキッカケで
エアリアルができるようになった」
という方は多いと思いますが、
実は私もその一人です。
①リップの時よりも波の奥で技をかける。
②テール支点の動きではなく、センター支点運動。
③リップの時よりも遅いタイミングでテールを蹴る。
(飛び出せるようになった以降は、
前足の引き付けが重要になります)
上記の条件が揃うと、
比較的簡単に波から飛び出せます。
とにかく「波の奥で技を仕掛ける」というのは、
どんな技のときにも非常に大切です。
ポジショニングが奥になったということが
昨日の自分よりも上手くなった証です。
例えば、大抵の場合
カットバックのリエントリーが上手く行かない理由は、
「ショルダーを走り過ぎてクリティカルから離れているから」です。
「今までリップのポジションと思っていたところが
カットバックのポジションだった。」
ということに気がついたら一気に上達するのです。
飛び出す方向
上記の方法で飛び出すことができても、
波の裏側に落ちるだけではプルアウトにしかなりません。
やはり、せっかく飛び上がれるのなら
「波の前に出られるようになりたい」
ところです。
ですので、
着地について考察してみます。
まず、
サーフィンのターン技術を大きくジャンル分けすると、
トップターン系とボトムターン系。
さらに細分化すると、トップターン系は
強い圧のかかるカービング系と
圧を逃がすフローター系。
リップは圧をかけたり逃がしたりと、
幅広い技術を表現できる技ですが、
エアは圧をかけることができません。
何故なら、相手は空気だからです。
そう考えると、エアはフローターに近い動きといえます。
着地についても
フローターが最もエアに近いといえるでしょう。
ただし、フローターのように着地したいと思っても、
『テール・ハイのオフザリップの延長のエア』
の場合には体が沖を向いています。
すると、
岸に着地点を設定するという
イメージが湧きにくくなります。
そこで提案です。
エアのジャンプ台を決めたら、
その場所から波が岸側に折れ曲がった状態、
90度岸側に折れ曲がった仮想波を想定してみましょう。
どうせ、飛んでしまえば水から離れるのですから、
技をかける角度を90度変えるイメージを構成します。
90度折れ曲がった仮想波に対して
テール・ハイのリップをかけ、
フローターのようにそっと落ちていくイメージです。
そのイメージを実現するためには、
上半身の先行捻りが必要で、
先行捻りは想像よりもかなり強い捻りが必要です。
上半身を岸側に捻るのですが、
下半身は波側を向いているので、
雑巾絞りのように捻じることが必要です。
前の手をリードに使いますが、
”グーッ”と思い切り開く感じです。
この動作は極端にやる必要があって、
お茶を濁す程度では効果がありません。
こうして、リップとフローターを
足して二で割ることに成功すれば、
テールハイのリップで波から飛び出しながらも、
岸に向かって飛び降りることができ、
エアリアル成功となります。
あとがき
PUか?EPSか?
エアリアルをするにあたって、
PUが良いのか?EPSが良いのか?
ですが、
EPSで着地をすると「パーン!」
と弾けるような着地で失敗することがあります。
PUは程よく沈んでくれるので
着地に関してはPUに軍配が上がると思いますが、
日本の短い波で瞬時に加速するのには
EPSのほうが向いていますし、
圧を作りやすいのもEPSですので、
飛び出しやすいのもEPSです。
ですので総合的に考えると、
EPSのほうがエアリアルに向いていると思います。
仮想波に技をかけてみよう!
もし、
「飛んでも波に置いて行かれる」という方がいたなら、
是非とも試してみて欲しい方法が
『仮想波を作って技をかける』方法です。
仮に同じポジションでフローターをしたとして、
足元の水が無くなって、
ハードランディングになることは
よくあることです。
そう思ってチャレンジすれば、
エアの特別感も和らぎ、敷居も低く感じます。
そうして仮想波で練習し、成功経験がついてくると、
いずれは仮想波は不要になります。
チャレンジに当たっての注意点
最後に注意点ですが、
エアに対して苦手意識を持ち続けると
エアが出来なくなる可能性があります。
メンタル的に高いハードルを作ってしまう前に、
誰にでもできると信じて
練習したほうが良いと思います。
逆に、無理だと思っていない方であれば、
60歳であろうともチャンスがあると思います。
ただし、ハードなチャレンジであることは確かですので、
怪我には十分に注意してチャレンジしてください。
ちなみに私も、後足の膝の靱帯を痛めていますし、
捻挫程度は頻繁にやってました。
ランディング場所をスープにすることで
ソフトランディングにできるのですが、
必ずしも上手くいく訳ではありません。
また、後ろ足をフィンで切ってしまう機会が
物凄く増えます。
フィンによる傷は、切れ方が悪く非常に治りが遅いため、
できれば、足の保護のために、
後ろ足だけでもブーツ着用をオススメします。
どうぞ、お気をつけてチャレンジなさってください。
田淵ロル
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