かつて私が先達に尋ねた疑問やその答え、
あるいは後輩に尋ねられて話したことを編集しました。
Q:サーフィンはスケボーで上手くなりますか?
A:個人差があり、特に初心者は要注意です。
ズバリ、サーフィンとスケートボードは違います。
それを理解した上で練習に活用できるなら
よいのですが、
初心者〜初級者で伸び悩みを感じている方の
上達を阻害する可能性があります。
スケボーとサーフィンはどう違う?
何故かというと、
スケボーはウィールのグリップが強いので、
電車のレールのようにキッチリと走行ラインを
トレースできますが、
サーフィンは違います。
また、波は止まっているように見えても
沖から岸に向かって進んでいます。
すると、
相対的に足元の水は動いていることになります。
つまり、
サーフィンしている状態と
スケボーをしている状態には
大きな差があるということです。
上級者と初級者では意味が違う?
すでにサーフィンが上手い方が
サーフィンの疑似体験としてスケボーをするのと、
これからサーフィンを覚えようとする方が
サーフィンの練習として
スケボーをするのとでは、
かなり意味が違ってきます。
上級者は、姿勢の確認や
体重移動の確認などを主な目的にしています。
仮に新しい技のヒントをつかもうと
スケボーしたとしても、
かなりリアルに
サーフィンの世界を想像しながら
練習できるのです。
まだ見ぬサーフィンの世界を
スケボーで妄想しているわけではないのです。
類似スポーツによる弊害
スキーやスノボ等の
ウィンタースポーツの夏季トレーニングに
スケボーやインラインスケートを
取り入れる方達がいるのですが、
まだ初級者の段階で一生懸命
ハイグリップ系の類似スポーツをしてしまうと、
思わぬ落とし穴に落ちることがあります。
スケボーやインラインなどの
類似スポーツでの練習を行った
初級者の方は、
冬本番の雪上においても
スケボーやインラインで得た滑走感覚を
優先するようになっています。
すると、
滑走のメカニズムの違いに
悩まされることになります。
雪上はアスファルトほどのグリップがないので、
足元が逃げてしまうのです。
技術的に言うと
『内倒』という状態になってしまい、
初級者の方だと、
リフトから降りた最初の方向転換で
面白いように皆、転倒します。
指導者は経験上、
夏季トレーニングをした初級者が
転倒してしまうことを知っているので、
本人には事前に伝えておくのですが、
それでも転倒してしまうのです。
この『内倒』グセというのは非常に厄介で、
一度ついてしまうと、
肝心な場面で必ず顔を出すようになるのです。
しかも、ほとんど消えてくれません。
では、
ウィンタースポーツの
夏季トレーニングとして、
インラインスケートやスケートボードを
してはいけないのか?
というと、モチベーション維持や
バランス感覚の向上などの効果が
見込めるとは思います。
しかし、それでも肝心の目的である
雪上での技術習得に
支障が出てくる可能性は否定できません。
ですから、
初級者を指導するにあたり、
夏季トレーニングとして
「滑走系の類似体験をしたほうが良いのか?
しないほうが良いのか?」
実は、指導者の間でも
意見の分かれるところなのです。
以上、ウィンタースポーツにおいての
「類似スポーツによる弊害」
について述べました。
では、サーフィンにおいては
どうなのでしょう?
あまりスケボーでの練習についての
ネガティブな意見を目にすることはありません。
ですが、実際に
「スケボーは上手くなったものの、
サーフィン技術は明らかに停滞したまま」
という方をたくさん知っています。
スケボーでの滑走感覚を波の上で
再現しようとしてそれが出来ず、
何年も技術的に停滞してしまっているのです。
私はその現象を
「スケボーによる練習の弊害」
の可能性があると思っています。
ですので、どうしてもスケボーによる
練習を取り入れたい方は、
ショップやインストラクターの指導の元で、
海でのサーフィンと陸でのスケボーが連動した
練習を行っていくことをオススメします。
個人的に思うこと
ここからは個人的な意見なのですが、
オートバイの練習において
「オフロードのスリッピーな路面で練習したライダーは
オンロード走行に強くなる」
という事例があります。
つまり、
「足元が逃げる条件で練習したほうが、
効果的な練習になる」
ということです。
その条件に照らし合わせて
他のスポーツを取り入れたほうが
弊害に苦しむリスクを回避できると思います。
田淵ロル
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