【サーフィンが上達しない原因】
1.スタンディング動作
1-1.スタンディング動作は大切
テイクオフといえばスタンディング動作です。
「立った瞬間がテイクオフ」というイメージを
持っている人が大半ですよね。
やはりサーフィンといえば
立ってからのライディングです。
ライディングのためには
サーフボードに寝ている姿勢から
立ち上がる必要がありますが、
それがスムーズにいかないと
ライディングが上手く行かない。
つまり
「スタンディング動作の不正確さが
上達を妨げる原因」
となっている場合が非常に多いです。
1-2.失敗しやすく、取り返しがつかない
日本の波は短い距離しか
乗れない場合が多いので、
「スタンディング動作が
スムーズじゃないと全て台無し」
ちょっとミスしてしまうと
取り返しがききません。
初心者の方でも、すでに経験済みですよね?
上級者ですら、冬のブーツを履いた時など
足が引っかかって前に出ず、
モタついて上手く乗れないことがあります。
本当は奥が深く難しいスタンディング動作。
1-3.サーフィン上達を妨げる技術パーツ
ところが、難しいことは重々承知の上で、
スクールの先生方は、
サーフィン入門の敷居を下げるために
「誰でもすぐにできます。半日で立てます」
と言いたくなってしまうのです。
でも・・・実はこのセリフが曲者なので、
初心者の方は注意が必要です。
「半日で立てるようになり
スクールの先生に褒められたので、
スタンディング動作については
初日にクリアしたと思い、
そのままサーフィンしていました。
ところが、
その後は横に進めるようになったものの、
上達している実感が持てません。
肩〜頭サイズになると、とても怖いです」
こういう症状を抱える人が増えています。
特にショートボードに乗る
体格の良い人。
たかがテイクオフと思いがちですが、
最初に問題を抱えてしまうと、
スタンディング動作は
サーフィン上達を大きく妨げる
技術パーツになってしまいます。
1-4.サーフィン上達の特効薬
ただ、裏を返せば
この動作がうまく行けば
上達が早くなるということになります。
特にショートボードサーフィンにおいては、
スタンディング動作のクオリティーは
上達に直結します。
また、海での経験を積まなければ習得が難しい、
ライディング技術などと比較すると、
陸トレでも十分に効果があるのが
スタンディング動作です。
2.上達の落とし穴
2-1.「サーフィンは簡単」という誤解
以前と比較するとスクールも充実し、
サーフィン未経験者が始めやすい
環境が整ってきました。
なのですが・・・
私には少しの不満があります。
「誰にでも簡単にできます」
って言われませんでしたか?
そしてその後、簡単じゃないことに
気が付き、頑張って練習するんですが、
なかなか上手くいかない・・・
そうなんです。
サーフィンて簡単じゃないんです。
2-2.スキー教師の経験から思うこと
実は、私はスキーのインストラクターを
していた経験があります。
並行してサーフィンも楽しんでいたのですが、
スキーとサーフィンを比較すると、
技術論やコーチング論においては、
スキーに一日の長があるように感じます。
ある時、スノーボードの全日本選手が、
「スキー理論でボクの滑りを評価してください。
ボクをスキー理論で指導してください」
と、技術ベース作りの手伝いを
スキー指導者に要望してきました。
みなさん礼儀正しく、大変に熱心。
ビデオを撮りながら喧々諤々。
ボードの選手数名とスキー教師数名で楽しく
一緒に滑らせて頂きました。
スキー理論は、他のスポーツの上級者からも
評価される先進的で成熟したものです。
2-3.他のスポーツとの難易度比較
私は、興味があることには
スグに首を突っ込む性格なので、
スポーツにまつわる様々な
経験を積んできました。
そして長い間
スノースポーツや マリンスポーツに
携わってきて感じるのですが、
どのスポーツも大変に奥が深く、
上達するのはそれなりに難しいものです。
しかし、上達の難易度を比較すると、
サーフィンが圧倒的に高いです。
比較にならないと言っていいレベルです。
3.スポーツとしてのサーフィン
3-1.発展途上の環境
最近では、サーフィンにおいても
スクールがたくさん誕生し、
初心者の方にとっての環境が整ってきました。
ただ、まだ発展途上段階です。
技術情報発信者の絶対数が少なく、
理論の構築も未成熟に感じます。
受信者である初心者側から見ると、
情報選択の余地がなく、
例えばテイクオフの
スタンディング動作についても、
自分にあった技術を選べるほどに
情報が充実しているわけではありません。
3-2.情報の取捨選択
実は、スポーツの上達において
情報の取捨選択はとても大切で、
情報発信元の権威よりも、
実際の効果のほうが優先されるべきです。
当たり前のことのように感じますが、
意外と実践するのが難しく、
「〇〇プロが言っていた」
といった権威のある情報は魅力的なので、
プレセボ効果も含め、
フラットな目線を保つのは困難です。
仮に、信じた結果が
ネガティブ側に働いたとしても、
発信者ではなく、受信者の責任になりがちなのです。
4.テイクオフの技術
4-1.上級者との差
上級者が波をキャッチし、
良い波の良いポジションで行う
テイクオフの諸動作と、
初心者が力のない波の
良くないポジションで行う動作では、
差があって然るべきです。
波のパワー、あるいはパワーの
受け方が違うからです。
もし、上級者が初心者と同じポジションで
テイクオフの諸動作をしたのであれば、
良い波の時とは違う動きをするのです。
4-2.異なる条件
つまり、最初から憧れのスタイルで
サーフィンしようとすると、
条件を無視したサーフスタイルに
なってしまう可能性があるのです。
まず、上級者は良いポイントで良い波を掴みます。
初心者は同じポイントに居合わせたとしても、
波の良し悪しの判断が難しく、
仮に判断できたとしても
波の取り合いに負けてしまい、
良い波には乗れません。
上級者と初心者の乗る波の違いは非常に大きく、
同じポイントの同じ場所にいたとしても、
驚くほど違う波に乗っているのです。
4-3.上級者のテイクオフ
しかも、彼らは早い段階で立つことを
それほど重視していません。
むしろ、ワンテンポ遅らせてから
わざと波の奥に移動して立つことを好みます。
上級者はテールが巻き上げられるような位置で
一連の動作をしているため、
テールを抑えて沈めるような
体重移動をすることが多いのです。
4-4.条件に合わせた技術
上級者と似たようなテイクオフの諸動作を
初級者がパワーのない位置で行うと、
失速の原因になることがあります。初級者にとって、
テール側に大きく体重を移すような
スタンディング運動は、
たったそれだけのことなのに、
長い迷宮の扉を開く行為に
なるかもしれません。
5.サーフィンの基礎
5-4.上級者が使っている力
上級者が波の切り立った場所でプレーする理由は、
「落下による加速度を利用する」
という側面もあるのですが、
実は、板に対し真下から
水流が当たる場所だからです。
スピードが遅くても揚力が強く働く場所が
波の掘れたところなのです。
なにしろ、水が下から上に動いている場所です。
そこでサーフボードの下に水流を受けると
身体ごと軽くなり、とても動きやすくなります。
要は下画像のようになります↓
↑これはフライボードという遊具の画像です。
自重と噴出する水の圧力の
均衡が取れている状態からの
動き出しの速さと自由度は、
まさに上級者のサーフィンそのものです。
実際のサーフィンにおいても、
この状態を作ってしまってからの方が
圧倒的に速く動けるのです。
5-5.サーフィン上達の要『揚力』
リバーサーフィンを見ると
メカニズムを理解しやすいので、
画像を用意しました。
波の斜面を滑り降りた
スピードを揚力に変えることも
ある程度は大切なのですが、
強い揚力を得るためには、
水の流れをサーフボードのボトムに
直接受け止めるほうが
効率が良いことがわかります。
実は、この状態を作れない、
あるいは作ろうとしないことが、
サーフィン上達を阻害する
もっとも厄介な原因です。
「サーフィンはスピードが大切」
というフレーズが、
「斜面を滑り降りるスピードが大切」
という誤解を生みます。
例えばボトムターンで板を傾ける理由、
レールを沈める理由も
リバーサーフィンと同様です。
サーフボードのボトム面に
直接水流を当てた方が
力を得る効果が高いからです。
5-6.初心者の陥るジレンマ
上記理由によって、「ボトムターンが基本」
という言葉が生まれたのですが、
初心者のうちは、
「サーフボードが斜面を滑り降りる
スピードを利用してターンする」
「スケートボードがアスファルトで
ターンする状態を海で再現する」
どうしても、このジレンマに陥ります。
ですが、実は、
ボトムターンとは
上記画像のフライボード状態を
作ることなのです。
6.上級者とは違うスタイル
6-1.揚力を得られないサーフィン
さて、今まで見てきた様に、
揚力を得る努力をしないまま、
サーフィン(波乗り)の条件を
整えられないまま、
上級者をマネたスタイルを作ろうとすると、
下記のようになる可能性があります。
『上級者にテイクオフの
アドバイスを受け、
両手を胸の横あたりについて、
腕立てふせの要領で両手を伸ばし、
スタンディング動作をしてみたものの、
テールが沈んでしまい失速しました。
サーフィンを始めたばかりの頃の
パーリングの記憶が残っており、
それを避けるため
後ろ荷重になっていた姿勢に
拍車がかかったのでしょう。
テールが沈み過ぎてしまうと、
サーフボードに正面から当たる
水の量が増え過ぎて失速します。
それ以降のサーフィンは、
スタンディング時の失速分の
スピードを補うために、
落下による加速を得ようとする
サーフスタイルに変化していきました。
まず、ノーズを下に向けて波から落ち、
そのスピードを利用しながら
立つのですが、
立つと同時にテールが下がり過ぎるので、
失速してしまうスタイルです。
『テール加重によるスピードロスと、
落下による加速の
帳尻が合えばテイクオフ成功』
というテイクオフ技術が完成しました。
上記テイクオフの場合、
波の下にいる時には
揚力を失っているので、
その場に留まってしまいます。
ですから、次の瞬間
後ろからきた波に襲われ、
強く押されることになります。
それでも転ばなかったなら、
押された分だけ加速して
もう一度前に進みます。
サイドブレーキを引いたままの車の
アクセルを踏むような感じです。
この悪循環も慣れてくると
そこそこ楽しくサーフィン
できるようになりました。
ですが、このスタイルは
せっかく掴みかけた
揚力を手放している状態なので、
上画像にあるような
フライボード状態とはかけ離れています。
つまり、上級者のサーフィン技術とは、
全く異なる技術です。
それでも次のステップを目指し、
ボトムターンやトップターンに
チャレンジします。
すると、横に走っているような
感覚はあるものの、
ノーズが向きを変えてくれず、
ターンを試みるたびに失速します。
「スケートボードなら上手くいくのに、
ナゼ、波の上ではできないんだろう?」
と悩み、上手く行かない理由は、
「自分のバランスが悪いからだ」
と結論づけます。
実は、それは間違いなのですが、
その時には、まだ
気づくことができません。
揚力を掴めず、
自重が勝ってしまった状態に陥れば、
上級者でさえお手上げなのです。
一度完成してしまったテイクオフ技術を
変えることは非常に困難です。
何しろ、自分では何が悪いのか?
ほぼ理解できていないのです。
ですので、
そのまま時間が過ぎていきました。
さて、上記のようなスタイルで
サーフィンしていると様々な
弊害が生まれます。
まず、少しでも大きな波になると
落下の難易度が急激に上がります。
速度の変化が激しすぎるので、
対応が難しいのです。
さらに難しいのは、
波に押されることです。
オーバーヘッドくらいに
大きな波になると、
後ろから押してくる
波のパワーも桁違いになります。
利用するには力が強すぎるのです。
ですから、落ちても怖くないサイズ、
後ろからぶつかられても怖くないサイズ
でしかサーフィンできません。
膝サイズは進まない、
頭サイズはぶつかられるのが怖い、
落ちても押されても丁度いい
腰〜胸サイズが楽しめるサイズです。
他の条件では楽しめない
サーフスタイルに陥ってしまいました』
というようなスパイラルに
陥いる可能性があるのです。
6-2.上級者とは異なるスタイル
波から落ちる力を主体にしたスタイル。
波に押される力を主体にしたスタイル。
それらは、波のサイズ変化に
左右され過ぎるスタイルなんです。
コントロールが難しいサーフスタイルを
身に着けてしまうことになるのです。
7.『波乗り』をする
7-1.先達の選んだ言葉『波乗り』
では、そうならないためには
どうすればよいのでしょうか?
答えは人それぞれ違うし、
教える人によっても様々かもしれませんが、
私が先達方から頂いた教えを言葉にすると、
『波乗り』をする、です。
『波落ち』でも『波押され』でもなく、
『波乗り』
つまり、揚力を掴み浮遊感を手に入れる。
揚力を得た後であれば、
様々な楽しみが待っているのです。
7-2.浮力が高いと上達は早く見える?
子供達や、大きな板で練習している人は、
サーフボードの浮力に対する自重が少ないので、
上達が早く見えます。
子供などは、ゴールデンエイジ効果も手伝って、
とてつもない上手さになります。
ただ、一般的な大人が大きな板で
練習している場合、
上手くいっている理由が、
「自分の運動がサーフボードに
伝わっていなかったから」
という場合があります。
サーファーが揚力を
逃がす運動をしていても、
「板が反応しなかったので波に乗れている」
というような、消極的な成功です。
その場合は、その後板を小さくすると、
全く上手く行かない状況が待っているので、
やはり、正しく力を受ける運動、
積極的に動いて力を受ける運動が
必要になってくるでしょう。
次回からは、
揚力を得るために必要な運動、
テイクオフの時に失速しないスタンディング
を解説してみたいと思います。
田淵ロル
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