【上達につながるスタンディング動作】
1.失速しない立ち方
1-1.スープでのテイクオフ
初心者の時に、
最初はスープでテイクオフの練習をしたと思います。
波に押され、その滑走感でサーフィンにハマった
という人は多いでしょう。
でも、半年も練習をしていると、
スープでのテイクオフは卒業してますよね?
ところで、今、スープでテイクオフをして、
失速しないで乗り続けられるでしょうか?
1-2.実は難しいスープでのスタンディング
そう言われると、チョット自信ありませんよね?
特にショートボードの場合は難しいと思います。
実は、初心者の方だけでなく、
中級者にとっても難しいんです。
ですので、できなくても普通だと思いますが・・・
「もし、スープのテイクオフの時に、
立たちあがる動作をしても失速しない
スタンディング技術があったなら、
ウネリからのテイクオフにも
役に立つんじゃないか?」
そう思ったことはありませんか?
そうなんです。役に立つんです。
力のないサーフスポットで
特にショートボードでサーフィンしている
初〜中級者には
かなりの効果があると思います。
1-3.失速の原因
さて、ではどうしたら
失速しないスタンディング
ができるのでしょう?
寝転んだ姿勢のままスープに乗り、
沖から岸まで移動するのは簡単です。
でも、立つと失速する。
その原因は、
板の上に立ち上がる動作の途中で
テール側を沈め過ぎて失速・・・
この失敗理由の方がとても多いと思います。
1-4.失速を避ける技術
当たり前ですが、サーフボードが
丁度良い角度を保っていれば、
正面からの水の抵抗を回避できます。
つまり、ノーズの上下の動きを
コントロールしながら立つことができれば、
失速を避けることができるのです。
では、失速しないための運動を
少し詳しく解説してみたいと思います。
2.サーフボードの3つの軸運動
2-1. 軸運動の解説
サーフボードの動きは3つの軸で
説明することができます。
少しややこしいのですが、
覚えてしまうと、
滑走系のスポーツ全般の理解が
深まる便利ツールです。
上画像をご覧になってください。
サーフボードに
棒を突き立てた状態を仮定し、
その状態でも動かすことのできる
方向を軸運動といいます。
【前後軸】
まず、前後軸運動(ローリング)。
サーフボードの左右のレールを
入れ替える運動が前後軸運動です。
滑走系のスポーツにおいて、
初心者が最初に覚える運動です。
【上下軸】
次に上下軸運動(ヨーイング)。
スケートボードのチックタックの
動きのように、
ノーズを左右に動かす運動が
上下軸運動です。
滑走系のスポーツにおいて、
中級者が使用する技術になります。
ある程度上達してくると、
上下軸運動と前後軸運動を
合わせた運動がみられ、
スムーズな動きを実現できます。
【左右軸】
最後に左右軸運動(ピッチング)。
ノーズを上下に動かす運動が左右軸運動です。
基本的に上級者の運動で、
滑走系のスポーツにおいては
最も難易度が高い運動要素です。
熟練の上級者であれば、
3つの軸を駆使した運動によって、
サーフボードは立体的に、
まるで生きているかのように動き出します。
2-2.初心者に要求される軸運動要素
上下の動きなのに左右軸とか・・・
ややこしい解説をして恐縮なのですが、
スタンディング動作において、
「ノーズが上下に動かないように
コントロールする」
ということは、
上にむこうとする力に対しても、
下にむこうとする力に対しても
対抗する力が必要になります。
「ノーズを水平に保つ」
と聞くと、一見簡単そうですが、
それなりのコントロール技術が
必要になります。
つまり、
上画像で説明した左右軸運動要素を
取り入れなければできないのです。
左右軸運動は、上級レベルの運動要素です。
つまり、サーフィンにおいては、
たとえ初心者であっても、
上級レベルの運動要素を
要求されてしまうのです。
左右軸運動を要求される度合いが高い
ため、サーフィンは難しいのです。
2-3.本当は難しいスタンディング
「テイクオフのスタンディングは卒業した」
と思っていても、
これを見直すだけで
「違う世界が広がってくる」
と言えるくらいに
大切な技術パーツなのです。
3.スタンディング運動
3-1.選択肢の一つとして提案
私がこれから紹介する技術は、
上体を反らすタイプのスタンディング方法です。
たくさんある技術の中の選択肢の一つと
捉えて頂けると幸いです。
3-2.上級者の運動
では、本題に入ります。
上画像の上級者の
手と頭の位置関係を見てください。
皆さんよりも頭が前です。
もし、余裕があれば、
その場で真似をしてみてください。
かなり腕に体重が乗ると思います。
初級者の方は
スタンディング動作で上体を起こすとき、
膝に体重が掛かっているので、
腕に重さを感じないと思います。
腕が楽な体重移動をしてしまうと、
テールが沈んでしまうので
失速の原因になります。
3-3.上級者との違いを理解しよう
上級者が良い波の良いポジションで、
上手にテールを持ち上げる力を
受け止めているにも関わらず、
こんなに腕に体重が乗っています。
もし、力のない波で
上画像と同じ運動をすると、
この上級者よりもテールは沈みます。
3-4.イメージにも時間軸をつくろう
「画像のサーファーは
立ち上がる寸前だからあんな姿勢なだけだ」
という意見があると思いますが、そうなんです。
立ち上がる寸前、というか、
立ち上がりながら
徐々に腰の位置を変えているのです。
頭の位置が前に行けば、
当然腰の位置も前に出ます。
膝の位置もしかりです。
自分が立ち上がりやすいように
腰と膝の位置を固定して立つのではなく、
サーフボードをコントロールしたまま
立ち上がります。
「ボードを動かさないために自分が動く」
というイメージです。
3-5.初心者に要求される難しい運動
ただ、もし初心者の方が
この姿勢を海で実践すると、
パーリングの確率がグンと上がります。
形を真似ても、まだバランスのとり方に
慣れていないからです。
パーリングを続けてしまうと、
失速よりもパーリングのほうが怖いので、
結局はテールに寄りかかってしまい、
「効果が無かった。無理だった」
となりがちなのですが、
今まで説明してきたように、
最初から上級者の技術を
要求されているのです。
難しいのが普通なので、
パーリングを怖がり過ぎず
できるだけ簡単な条件を探して
実践するべきだと思います。
ここを諦めると、
後々にツケが回ってきてしまいます。
ですので、パーリングしてもあまり怖くない、
スープでの練習がオススメです。
パーリングとテール加重失速の
間にバランスを取る必要があります。
どちらの限界も
スープの練習で知っておいた方が
良いでしょう。
4.スタンディング運動の陸トレ
4-1.陸トレ・スタンディング解説動画
私の提案するスタンディング方法を
マスターするための陸トレです。
サーフボードのノーズとテールが
床に着かないように立ち上がれれば成功です。
「サーフボードの水平を保つ」
ことの難しさが分かると思います。
ジジイなのでフラフラですが、
参考動画を作ってみました。
なんとかノーズとテールが床につかない
スタンディング動作をしています。
【練習方法の説明】
まず、サーフボードを10センチ程度
浮かせられるクッションの上で
前後バランスを取ります。
その上にパドル姿勢をとります。
寝る時に、サーフボードとクッション
の関係がズレないように注意してください。
ノーズもテールも床に触れていない状態で
バランスが取れていることを確認し直しましょう。
次に手をついて胸を反らします。
この時、両手が前後にズレていることに注目してください。
寝た状態では骨盤が正面に向いていますが、
立つまでに向きを変える必要があります。
その準備として手を前後にズラしています。
コツとしては、レギュラーなら右手、グーフィーなら左手を
クッションの位置と同じ
バランスの中心付近に置いてください。
その手で身体の重さを支えるイメージを持ってください。
反対の手は、膝に掛けた重さと釣り合いをとります。
ここからが一番のポイントです。
こんなに上体を起こしているのに、
テールが下がっていません。
ほとんどの初心者は、
この時にテールが下がります。
手の位置と膝の位置を固定して上体を起こすと
寝ている時よりも
頭の位置が後に下がるため、
必ずテールが下がります。
それが失速の原因です。
私は上画像の時に、
手は固定していますが、
バランスをとるために、
膝を前にズラしています。
身体を反らすことで、
徐々に身体のパーツが中心に集まります。
頭の位置は高く、腰は前に。
身体の重心をクッションの位置にすることができました。
上画像は立ち上がる前段階で、
私にとってのニュートラルポジションになります。
クッション上に身体があるので板は傾きません。
この時、肩の向きと腰の向きは
すでに斜めになっています。
(後ろ足が変なところに着いているのは単なる失敗です)
この段階では手をボードに置いておく事が大切です。
この後、サッと立ち上がるのではなく、
頭の位置を動かさないで、
板だけが下がるイメージを持ってください。
そして、上画像で最も大切なのは、
前画像の場面と比較すると、
腰の位置が前に動いていることです。
だから、ノーズもテールも動かさずに
スタンディングできているのです。
板を動かさないために、自分が動くのです。
手と膝を固定して立つと、
板は後に傾いてしまいます。
今回紹介したスタンディング方法を
マスターすると、ノーズが上下に動かないので
かなり失速が減ります。
簡単そうに見えますが、
中級の方でもチョット
苦労するかもしれません。
もしかすると、
初級者の方には難しいかもしれません。
怪我をしない程度に
練習してみてください。
4-2.今までのスタンディングも試してみよう
「胸を反らさないほうが良い」
という意見もありますし、
色々な方法があると思いますので、
それらも、一度上の動画と同じ陸トレ方法で
試してみてはいかがでしょうか?
ノーズとテールが上下しない立ち方かどうか?
確認してみてください。
上の動画の陸トレ方法だと、
自分の動きがどんなふうに
サーフボードに伝わっているのかが
とても良くわかります。
たとえば、頭の位置次第で、
スグに傾いてしまうこととか、
足を曲げるだけでも調整できるとか、
思っている以上に
前後バランスが微妙であることを
理解しやすい方法なんです。
4-3.提案した陸トレのメリット
実際のサーフボードを使うので、
何かを買い足したり、
何かに入会する必要もないので、
気軽に試せるのが一番のメリットですが、
とっておきのボードだともったいないので、
可能であれば、安い中古ボードが一枚あると、
いろいろな場面で重宝すると思います。
この陸トレによって、
サーフボードをフラットにしたまま
立ち上がる事ができれば
あとは、ノーズを下げる力加減と
ノーズを上げる力加減の
感覚をプラスして本番のスタンディング運動に
取り入れることが可能です。
スタンディング運動は、
波の上だと速さで誤魔化せるのですが、
この陸トレ方法だと誤魔化しきれません。
特にユックリやると難しいので、
是非、ユックリした動きでチャレンジして、
誤魔化しのない動きをマスターしてください。
この練習、一回でできる人もいれば、
「なんだか全然うまく行かない・・・」
という人もいると思います。
この練習では、サーフボードの挙動を
どう考えているか?が如実に現れます。
オススメの陸トレです。
田淵ロル
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