水平テイクオフのメリット・デメリットとは？

こんにちは、田淵ロルです。

今回は、質問のあった
水平テイクオフについて書いてみたいと思います。
水平テイクオフについては、
ネット上でも熱い議論になっているようですので、
私も意見を提案してみたいと思います。


以下は、後輩が仲間数人と共に
ボディーボードをした時のエピソードです。

皆で波の斜面を滑り降りようと、
ノーズを下に向け、波から滑り落ちながら
ボディーボードを楽しんでいました。

すると、仲間の1人が
「板の後ろ側を使った方が面白いよ！」
と言って、皆とは違う方法で遊び始めました。
「そんなことあるものか！
斜面を降りたほうがスピードが出るはずだ」
という皆をよそに、
その子だけは
ロングライドを連発しました。

このエピソードは
サーファーにとって、大変参考になるエピソードです。
「ノーズを下げることばかりが正しい訳ではない」
というヒントが隠れています。

上画像のどちらの上級者についても、
ノーズが下がっては見えません。

初心者の方の場合、
どうしてもスピードを求める傾向があるので、
上画像の状態を維持することなく、
ノーズを下に向け、
波から落下してしまいます。

その結果、急激に加速しますが、
ボトムに降りると水の抵抗で失速し、
今度は、後ろから来た波に押されます。
「失速しては押され、押されては失速の繰り返し」
というタイプのサーフィンになってしまいます。

では、上級者はノーズを下げないのか？
といえば、そんなことはありません。

サーフボードに働く遠心力や重力を「外力」といい、
それに対抗する力を「抗力」といいます。
サーフボードには、様々な外力が働きます。
もし、サーフボードを水平に保ちたいのであれば、
外力に対して、適切な抗力を働かせる必要があります。
つまり、コントロールする必要があるのです。

コントロールには3つの軸運動があります。

上画像の赤い軸である左右軸運動により、
ピッチングをコントロールすることで、
ノーズの上向きと下向きに関わる抗力を作り出します。

これは、板の上に寝ている状態でも同じです。
当然ですが、ただただ寝ているだけでは水平は保てません。
様々な外力に対し、適した抗力を作る必要があります。

ですから、
初心者の方がノーズを下げるのを止めただけでは、
水平を保つのは難しいのです。


ちなみに、上級者の中で
「テイクオフ時に板を水平にしよう」
という意識を持っている方は少ないと思います。

テイクオフ時には、
ノーズの上げ下げによって、
波に置いて行かれない、波から落ちない
丁度良いバランスを取っているため、
結果として水平を保って見える場合が多いだけで、
ノーズの下がったテイクオフも存在します。

コントロールするのですから、
ノーズを上げることもあれば、
下げることもあります。
もし仮に、ノーズを下げるのを禁止すれば、
バランス維持は非常に困難になります。

さて、
上級者のテイクオフ時の感覚についてですが、
サーフボードは水平を維持しているにも関わらず、
「テイクオフはノーズを下げる」
と説明する上級者は、少なくありません。

例えば、上画像の上級者には
ノーズを下げる、あるいは抑える意識があります。
板は水平に見えますが、
実はノーズを下げているからこそ、
水平を保てる場合があるのです。

この波の、この位置と、この状態では、
テールを巻き上げるほどの外力は働きませんから、
下半身の重さの方が勝っています。
そして、手の位置あたり、
つまりボードの最大幅あたりが
最も押し上げられる位置になっているので、
全体のバランスとしてノーズを下げる意識がないと、
身体の重さが乗っていないノーズ側が持ち上げられ、
波に置いて行かれてしまいます。

ですから、上画像の条件でサーフィンをした
上級者にテイクオフ時の感覚を聞くと
「ノーズ下げるに決まってんじゃん！」
と話すと思います。
実際、上級者からそのように聞いた方も多いでしょう。

しかし、それを鵜呑みにすると、
初心者の方は全く違う状態を作ってしまう訳です。

そこで、
この解釈の齟齬を解消するために生まれたのが、
「水平テイクオフ」という概念だと思います。

水平を保とうとすることで、
ノーズを下に向けるのを止めることができれば、
波から落ちずに済むこととなり、
良いサーフィンが可能、
というメリットがあります。

ただし、
上記の技術的な流れを理解していないと、
「コントロールを放棄することが正しい」という
誤解を生みかねません。
ノーズを下に向けないというのは、
飽くまでも対処療法であって、
根本的な解決のためには、
正しいコントロール技術が必要になります。

初中級者から中級者を目指す方が、
水平テイクオフに固執すると、
ノーズを下げることへの抵抗感から
適正な抗力を作る能力が育だたない、
というデメリットもあります。

そうなってしまうと、
上画像の状態を作れない可能性がありますから、
注意が必要です。

是非とも柔軟な技術理解で、
水平テイクオフの壁を突破してください。




田淵ロル